2来訪者


「ぎゃ―――」
終わったと、心で呟いたとたん家に男の声が響いた。
何だよもう。こっちは疲れ果ててるってのに。
でもこのまま寝てると、明日リナさんに何言われるか分からないし…悲鳴の正体調べに行くか。
声には出さずに溜め息をついて、俺は床にある梯子の扉を開けて下へ降りる。
どこから声がしたんだろ?
屋根裏だからよくわかんないな。
その上来たばかりだから、まだ居間とキッチンとトイレくらいしか場所覚えてないぞ。
…カンを頼りにいこ。
「ヒーノーあたし言ったわよね〜。」
げしげし。
何かを蹴る音と、リナさんの声が廊下に響く。
ヒノって俺ココにいるんですけど…。
とりあえず音のする方に歩いていくと、パジャマ姿のリナさんが廊下で黒い固まり(?)を蹴っていた。
何がいったい…?
俺が呆然としながらことの成り行きを見守っていると、リナさんの部屋の向かい側のドアから、やっぱりパジャマ姿のアメリアさんが現れた。
彼女は眠そうに目をこすりながら、
「リナさんどうかし……はっ!」
眠たそうだった目がリナさんが蹴っているモノ(黒い固まり。もしかしたら人)を見るなりぱっと目覚めたのか、びしっと(何故か異様なまでに生き生きと)指し――いったい何を…?
「おのれ乙女の部屋に無断で入ろうとするなんて!リナさんだったからいいものを!たとえ天が許してもこのあたしが許さない!」
ここで、アニメのセイギノミカタがするような感じで決めポーズ。ってなぜ故に!?
「かくなる上はあたしが天に変わってあくに正義の鉄槌下すまで!」
もしかして…セイギノミカタのつもりっすか?
「あら、アメリア。どうでもいいけどもうヒノはやっつけたわよ。」
「ええーそんなぁ!あたしの見せ場は〜〜〜!?」
「そんなのしんない。」
「全くあたしがあれほど言ったのに、部屋に忍び込むなんていくらあたしが美少女でもいい度胸してんじゃないのよ!ヒノ!」
……もしかして、俺が忍び込んだと勘違いしてる…?
「あのー俺ならさっきからここにいますけど!」
少し大きめの声で言う。
今のうちにいっとかないと俺が忍び込んだで解決されそうだ。
それだけは回避しなくては!
「へっ?」
俺に言われて初めて気がついたのか、リナさん間の抜けた声を出して俺を見る。
「あれー?部屋に仕掛けてあった有線トラップに誰かが引っかかって黒かったから顔の判別がつかなかったけど、たぶんヒのだとばかり…。」
「……いったい何のためにそんな物騒な……。」
確か有線トラップって、映画とかで基地とかの周りに張り巡らされてる針金に電流が流れてる奴…だったはずだよな?
「なにって。もちろん防犯のためよ。」
当然のように平然と言う。
「もういいです。とりあえず俺上でまた寝ます。」
「悪かったわね―起こして。あはは。あたしもこいつふん縛ったら寝るからさ。」
背後で謝罪力0%な感じで言う、リナさんの声を聞きながら俺はこれからの事を思い直した。
ここで平穏に暮らすのは不可能だと……。






次の日の朝、俺は朝食を作った後アメリアさんと町に出かけるになった。
間だ、店は開いてないのでは?と言ったけど、実は中心街の方はそこそこ店が開いていると言う事だ。
つまり昨日かなりの時間をかけて歩いたのに中心まで言ってなかった事か…。
「ヒノさんこっちですー―!!」
アメリアさんが遠くで手を振って俺を呼んでいる。
なんだかこれじゃ彼氏と彼女みたいだな。
「あのモノレールで行くんです。」
「モノレール…。」
電車じゃなくてモノレールってのがなんかすごいな。
「ココではですね、成績のいい人はこういうカードがあってですね…。」
と言ってアメリアさんはポケットから1枚のカードを取り出す。
カードにはアメリアさんの顔写真と、名前が書かれていた。
「こういうカードが支給されてまして、このカードがあると公共の施設の利用が無料になるんです。だから皆これを取るために必死で頑張るんですけどね。」
「へぇー。いいですねそれ。その成績って各教科ごとですか?」
「はい。クラスで各教科のトップの人がこのカードを支給されるんです。2ヶ月に一度試験…あ、簡単なミニテストみたいなモノです。それで成績トップの人が貰えるんです。
ヒノさんもなんか得意教科があるんですか?」
「ああ。体育だったら結構自信があるんだ。」
「体育ですか…でもうちの学校は結構ハイレベルですよ。特に先生の一人が・・。」
「そうですか…。まあやってみなくちゃ分かりませんし。」
「ところで敬語止めてくれません?」
「えっ?まあ、俺も敬語って苦手なんですけど…。リナさんが強烈なイメージだもんで。つい敬語に。」
「あははは…。なんとなく分かるなそれ。」
「でしょう?」
「でも、あたしに対しては止めてちょうだい。」
「分かった。アメリア。」
「じゃ、行きましょ。」
そう言ってアメリアは満足げに笑った。




いったいどうなってんだよここは!?
有名チェーンレストラン、有名チェーンデパート…絶対おかしいってこれ!?
俺はここに来てから何度言ったであろう台詞をまた心の中で叫んだ。
ざっと歩き回っただけでもすごい充実した店構えだったぞココ…。
アメリアはいきたい場所があるらしくて、ついた早々分かれた。なんだか案内になって無いような気がするけど…
まぁ俺も誰かと一緒に歩くより一人のほうが結構気楽だけどね。
適当に景色を楽しみながら歩いていくと、裏路地に続いているようなビルの隙間を発見した。
こういうのを見ると思わず進みたくなるんだよなぁ。
かなり細道が続く。まぁ大きなビルとビルの間だからな。道も長いか。
これで進んだ先は行き止まりでしただったらすごい間抜けな感じがするなぁ。
けど俺のそんな心配も無駄に終わった。
奥の奥までたどり着いたからだ。
そこはちょっとした広さの空き地のようだった。一応コンクリートで舗装してあるけど雑草なんかもまばらに生えている。
元は駐車場だったんだろう。抱けどビルが多くなってココだけ余る形で残った、多分そんな場所。
そこには結構な人数が居た。誰が建てたのかは分からないけどバスケのゴールまであって何グループかで試合をしているみたいだ。
今試合は、なんと3タイ1でしている。しかも一人だけの方、銀髪の人は相手チームを圧倒している。
うーんすごいなぁ。
あ、でも相手チーム割りと下手だわ。これなら俺でも頑張れば出来るかな?
「おい、あんた新入りか?」
俺が試合を観戦していると俺と同じくらいの男が近寄ってきた。
「ああ。俺は今年からここの学園に入るんだ、よろしくな。」
「へぇー外から来たのか。」
物珍しそうに男が言う。
「ところでさ、今試合している人何物なんだ?すっげぇ強い銀髪の方な。」
「ああ、あいつか、アイツはゼルガディスっていって、学園じゃ有名な奴だよ。特に女子にな。」
最後のあたりはちょっとひがみが入ってるような…。
でもまぁ仕方ないか、色恋沙汰には興味無い俺でもかっこいいと思うもんな。
「え、っとゼル…なんだッけか?」
「はっはっはっはゼルガディスだよ。ぜ・ル・ガ・ディ・ス。」
「なげぇよ。名前。」
「ああ。俺もそう思う。」
俺達が世間話をしているといきなり歓声が上がった。
ゼル…何とかがダンクシュートを決めて試合に勝利したらしい。
「すげえなアイツ。」
「ああ全くうらやましいぜ。…そうだ、ここにまた来るつもりなら気をつけろよ。」
「気をつけるって何をだ?」
「ここは女子禁制なんだよ。」
「何で。」
「ゼルのやろうがいること知ったらここにファンの女達が押し寄せてくるだろ。
…お前も結構女顔だけどまさか女じゃないよな?」
はい。そのとーり。
「違う。場かにしてんのか?」
ホントはそうだけど今は隠さなきゃ行けないから、そう答える。
「はっはっはわりぃわりぃ。気にすんな。」
「ゆるさん。わびついでにバスケの相手してもらうぜ。」
「ほう。俺とやるってのか、よっしゃいいぜ。やってやろうじゃんか。」
男がゴールの方に言って何人かと話す。それから手でこっちに来いと合図した。
久しぶりに楽しめるぞ♪





「先に3ポイント取った方が勝ちで良いな?」
「OK!」
「俺がジャッジをしてやる。」
ボールをもってゼル(めんどいから省略)が進み出る。
「レディ…。」
俺と男が身構える。
「ゴー!!」
一気にジャンプして俺はボールを奪った。
それから一気に加速してゴール近くでジャンプしてダンクシュートを叩きこんだ。
ぐわぁぁぁぁぁん
ゴールのリングが音を鳴らしながら揺れる。
あたりはその音が聞こえるほど静かになった。
見ると全員が皆ぽかんとした顔で俺を見ていた。
「ヒュウ。やるじゃないかあんた。」
いち早く硬直から抜け出したゼルが言う。
「いやあ。勉強がダメなぶん運動の方が自信があってな。」
「それだけ聞くと、俺の知り合いを思い出すんだが…。」
「まぁ。似たような奴はいるだろ、世の中広いし。」
「それもそうだが…。あんた名前は?」
「俺?ヒノ・ツキハ。あんたの名前は知ってる、こいつに聞いた。ゼル…ディガスだッけか?」
辺りでどっと笑いが起きる。あれ?間違えたか?
「俺の名前はゼルガディスだ。」
「あ、わりぃ。ゼルでいいか?」
「そうしてくれ。」
やや疲れ気味にゼルが言う。だってなぁー長いんだもんなぁ。
「さて、続きしようぜ。」
さっきの男に向かって言う。
「いや。勘弁させてもらうわ。お前強すぎだ。」
「そうかー?でも俺、兄貴に勝ったこと無いぞ。」
「そいつが強いんだろ。」
とゼル。そうなのかな―?
「ここじゃ俺の次に強いんだぜそいつ。」
「けどあの動きじゃとてもじゃないがついていけねぇよ。」
「そう、なのかな?」
「ヒノ、オレとやってみないか?俺と同じくらいの奴はここにはいないんだ。」
「ああいいぜ。」
答えてふと腕時計を見ると時刻は5:30.ちなみにここまでモノレールで40分ほど。
「やばい!悪い!無理!早く帰らないと殺される!」
「殺され…?」
「えーっとそれは言葉の文なんだけど!とにかく時間が無いんだ!帰らせてもらう!」
言うだけイって俺は脱兎のごとく走り去った。



ちなみに帰り道に迷って結局リナさんに滅茶苦茶怒られた。


んでもってその日の夜。
俺は風呂に入っていた。それが悪かった。
今日はバスケやら全力疾走やらで汗をたくさん書いていたからいつもより念入りに洗っていたのも悪かった。
俺が風呂から上がってバスタオルを巻いて、長い髪を拭いているといきなり扉が開けられた。
扉を開けたのは男だった。しかも見知らぬ。
目と目が合って何秒間か見つめあう。
多分こいつはリナさんかアメリアの覗きに来たんだろう。
けど、なんで入ってきたって事はどうでもよかった。
そして体は反射的に動いた。
「この痴漢が〜〜〜!!」
叫んで拳が男の鳩尾にめり込んだ。
「はぁはぁ…。」
「どうしたの!?」
俺の声を聞きつけてか、リナさんが入ってくる。
「なに?こいつ…ってヒノあんた……。」
そして言葉を失う。まじまじと俺を見ている。
普段はサラシを巻いて押さえている胸が今はそのままだ。
「リナさん!?ヒノさん!?何が…ってええ!?」
もともと大きいアメリアの目がさらに見開かれる。
『おんな――――――!?』
家中に二人の声が響いた。



転入二日目にして正体(?)がばれた……どうしよ。








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