1.どたばた騒動幕開けだ。


でかい…。
俺は飛行機の窓を覗きながら眼下に広がる島を見て思った。
島全体が塀で囲まれていて、その島が直径2・300キロはある。
しかもそれが全部、学校。
こんなんが世界にあるなんて…世の中はおかしなこともあるな…。
てか、学校のパンフを見ると学校だけじゃなく、商店街やデパート、さらに遊園地とかもあるらしい。
もうここまでくると立派な小国だよな。
まあ、空港やら港やらあるし、銀行もある。
あと、従業員とかが住む居住区、生徒の寮も一軒家になっている。
幼稚園、小学校、中学校、高校、大学。
全てエスカレーター形式。
途中で出る生徒も入る生徒も極端に少ないエリート学校。
セイルーン学院。
そこに俺は入ろうとしている。
はぁー、パンフを見たときも驚いたけど、実際に見ると胸までどきどきしてきた。
死んだ父さん。行方不明の母さん。
一時は恨んだけど、男顔負けの馬鹿力と、男に見える顔に生んでくれてありがとう。
俺はこのセイルーン学園で、男として平穏に生き延びるよ。
だから気にせず成仏してくれ。
―――この時俺はこの学園で平穏に生きると言うのがどれほど難しいのか、知らなかった。
当たり前だけど。
「―――セイルーン学園に到着致します。シートベルトをお締め下さい。」
アナウンスが入る。
言われた通りにシートベルトを締めて、心を落ちつかす。
よしっ
気合を入れるぞ!
これから俺はここで暮らすんだ!





見上げれば空が茜色に染まっていた。
たしかここに着いたのってお昼過ぎだったよな…。
腕時計を見ると、もう5時を回っている。
つまり5時間近く迷っているって事か。
てかここ広すぎ…。
4月だからそんなに寒くないけど、とっととしないと日が暮れちまう。
俺がそんな事を考えながら、歩いていると、学園に入ってから初めての人を見つけた。
ラッキー♪
ほとんどの生徒が春休みでいないから、デパートとかもしまってて聞けなかったけど、やっと人に道を聞ける!
俺が運良く見つけたのは女の子の二人連れだった。
一人は俺よりも頭一つ分くらい小さい子で、栗色の長い髪に、黒のヘアバンドをしている。
多分中学生かな。かなりの美少女だ。
まぁ俺は女だから関係無いけど。
んでもう一人は身長は、やっぱり連れの女の子と同じくらいで、おかっぱの黒髪をしている。
こっちもかなり可愛い美少女だ。
向こうもこっちに気付いたらしくこっちを見ていた。
よし、男らしく男らしく。
「あの、君たち中学生かな?分かるかな、高等部の寮がある場所。」
「何てこと言ってるんですか!早く!リナさんに攻撃されないうちに逃げないと!」
黒髪の女の子が慌てて言う。
何の事だろ?栗色の髪の女の子、リナって子が攻撃?
「アメリア……………!」
怒気を含んだ声でリナって子が黒髪の―――アメリアって子に言う。
うう…。
怖い。よかった。あのペンダント付けといて。そうじゃなかったら―――。
「あなた、名前は?」
「はいっ俺の名前はヒノ・ツキハです。」
思わず、言葉遣いが敬語になる。
「そう、分かったわ。覚悟しておきなさい。あと、先にあの建物に行く事ね。」
と言って彼女が指したのは木々の間からでも見える背の高い建物だった。
あそこなら道を聞かなくても行けるだろ。
「そ、それじゃあ……。」
アメリアさんが声を掛けて去って行く。
なんか哀れみのこもった目で見られたのは気のせいだろうか?
何はともあれ教えてもらった通りに俺は歩き出した。





「はぁい♪」
…………………………………………
玄関を空けるとさっきのリナさんが手を振ってにこにこ笑っていた。
あの後彼女に教えてもらった通りに、建物に行くと、やたら大きくて、立派な家に着いた。
なんでこんな大きな家にたどり着いたのか分からなかったけど、とりあえずノックをすると彼女が出てきた。
「あ、あの…ここってこの地図の場所ですよね?」
「そうよ。あたしが頼んだのよ。ここの校長とは知り合いでね、ある程度はわがまま聞いてくれるのよ。」
「いや、それはそれですごいですけど…。頼んだって…。俺、自分の寮に行きたいんですけど……。」
「ここがあんたの寮よ。」
さらりといきなり言う。
…………………………………………
「ってどうしてですか!普通、男と女は寮別々でしょう!」
もしかして女ってばれたのか!
「もちろん、普通はね。」
廊下からひょこっと顔をアメリアさんが出す。
「こ、こんばんわ。」
「あら、さっきの……。もしかしてリナさん!さっきの電話!」
「んふふ。そうよ。―――てなわけでヒノだったわね?あんたの部屋は屋根裏部屋ね。
あと、あたし達になんか変な事をしたらー――地獄を見せてあげるから。」
この目は本気だ。
本気で地獄を見せようとしている。俺、女だから関係無いけど。
「しません!でもだったら、なんで俺をここに?」
「もちろん―――さっき人を中学生と言った事の、お返しよ。」
「はい?」
「リナさんは16歳です。」
「……………。」
俺と同い年…。
リナさんはにぃーこりと笑って―――あああ、めっちゃ怒ってる!
「あんたにはこれから家事ぜーんぶやってもらうから。
ちなみに校長に掛け合って部屋を買えてもらうってのは無理なんでそこんとこよろしく。」
笑みの中に、怒りが満ちてるぅぅぅぅ〜。
「とりあえず、今日から夕飯よろしく。」





ドキドキ
ダイニングテーブルに沢山の皿が置かれている。
まだ、料理は減っていない。今から食べるのだ。
でも10人前近く作ったぞコレ。全部食べられるのかな?
あー余計なこと考えて、気持ちを紛らわせても全然落ち着けない!
料理人の気持ちが少し分かったような気がする。
「あんたさぁ、もうちょっと見た目にこだわれないの?」
ううう。不器用なんだよう〜。でも味には割りと自信があるんだ〜。
「すみません。勉強します。とにかく食べてください。」
「そうですね、ヒノさんも座って。」
「はあ…………。」
びくびくしながら俺が座ると、二人は頷きあって、
『いただきまーす』
「い、いただきます。」
パク
彼女達が一口目を食べる、
うわっ心臓がばっくばくだぁ。
まずかったらどうなるんだろ〜考えたくない〜
「おいしぃ。」
「おいしいです。」
なんだか意外そうに彼女達が呟く。
「ホントですか!」
「うん。見た目があんまり綺麗にできていないけど、そこらの下手なレストランより、おいしいじゃない!」
「滑らかな舌触りのスープに・・・あ!こっちのグラタンも!」
「ホント〜!ヒノ、あんた料理うまいじゃない!」
「ははは…どうも。」
あ〜なんかどっと疲れが…。
それにしても凄く食べるなこの二人…俺も結構食うけど二人前くらいだぞ。
リナさんは5人前近く食べそうな勢いだし。
「そうそうヒノ、あんたこれから毎食作ってね。とりあえず3人前くらいで。
あと掃除さえしてくれれば言いから。」
「あれ?洗濯は・・・?」
「あんた下着触る気?」
ジト目で睨んでくるリナさん。
そうだった。俺は今男装しているんだった!
「い、いえっそ、そんな滅相もない!」
「分かったなら結構。じゃ、後片付けもよろしくね。」
言うだけ言うとリナさんは食事を再開した。





「疲れた〜〜〜〜。」
ばふっ
ベットに倒れこみながら俺は言った。
近くの窓から星が見える。
屋根裏部屋は、案外きれいで今日寝る分には差し支えは無いだろう。
ベット一つだけ(なんでベットがあるのかわからないけど)他には何もないけど服を入れるタンス代わりの物を買うだけでいいや。
んで明日掃除しよう。
疲れたよもう。
今日は色んな事があったなぁ…。
首にかけたペンダントを外して月明かりにかざす。
何の石だか分からないけど、涙型で半透明の石が、柔らかな光に照らされてすごく綺麗だ。
この石が俺のー――を弱めているんだよな。確か。
ぼんやりと考えながらいつのまにか眠ってしまい、俺の入学(?)初日は幕を閉じた。












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