もう何も求めない。賞賛も哀れみも同情も何もかも。
   ただ終わるために。
   ただ終わるために。
   漆黒の翼持つ天使は引き金に自らの指を這わせた。
   ただ終わるために。
   ただ終わるために。
   ―あの美しい銀の光とともに、還りたいから。
 
  trigger happyending
 
   宣言しよう、今高らかに。
   それは序曲(オーヴァチュア)、あるいは進行合図(ファンファーレ)。
  「……どこに戻る気もない」
   終わりの始まりのそのまた始まりのさらに前哨戦の選手宣誓。
  「僕の能力の限り、すべての罪人を裁いてみせる」
   黒い天使は裁きの天使。
   裁き、それはすなわち人殺。
   彼は解っている。
   正義などという言葉は特定の者達に行使される暴力に他ならず、
 ただ多数の支持があるが故にそう呼ばれるに過ぎないことを。
   だから彼はそんな戯言は口にしない。
   力は力、暴力は暴力。純粋にそれはそれとして行使する。
   そうでなければいけない。
   正義などという戯言で装飾した暴力で、光を闇に貶めたくはなかったから。
   あの眩しい光が例え闇から生み出されたものだとしても。
  「闇から生まれた者は闇から生まれた手で闇へ帰す―それだけだ」
   宣言しよう、今高らかに。
   闇より生まれし罪深き同胞達に。
   あの眩しい光を闇へと送ったその後で。
   それは卑怯なことなのかもしれないけれど。
 
   ―良い死を。
   おやすみなさい、永遠に。
   望んだものは一人ぼっちのデッドエンドではなく。
   僕と共に還り逝こう。
   
   薄暗い倉庫、いや廃屋の中。
   ただがらんどうな空間の中に静寂を纏って佇む黒い天使。
   鈍く光る凶器を手にし、暗く沈む狂気を抱き。
   廃屋の最奥の壁には白石灰で描かれたいびつな円。
   その円から十数メートル離れた位置に、彼は立っていた。
   鈍く光る凶器を手にし、暗く沈む狂気を抱き。
   マガジンに弾丸を込め、それをグリップに装填する。
   おもむろにスライドを引いて薬室に初弾を送り込むと同時にスライドがハンマーを起こした。
   ベレッタM92F。装弾数は15発。
   照門と照星を射抜く凍えたエメラルドグリーンの瞳。
   彼はトリガーを引いた。
   乾いた着弾音を響かせて円の中心に穴が穿たれる。
   トリガーを引く、穴が穿たれる。トリガーを引く、穴が穿たれる。トリガーを引く、穴が穿たれる……。
   ―お前に誰も、狩らせやしない―
   不意に蘇る、空色の青。それを縁取るように流れる、あの銀色。
  「……っ」
   チュイン。
   揺れるエメラルドグリーン。震えは跳弾となって灰色のコンクリートを抉る。
   あの空色の青を、あの銀色を、壊したのは自分。
   ―お前は俺が止める、止めてやる―
  「……君がそう言ったから、僕は」
   止めることが出来ないように、こちらから止めてしまった。壊して。
  「それで、良かったんだ」
  終わりはもう、すぐそこまで来ているから。
   鈍く光る凶器を手にし、暗く沈む狂気を抱き。
   再び、トリガーを引く。
   トリガーを引く、穴が穿たれる。トリガーを引く、穴が穿たれる。トリガーを引く、穴が穿たれる……。
   ―カノン…お前…―
   掴まれた手首が痛かった。……より激しい痛みを感じていたのは、彼の方なのに。
   他ならぬ自分が与えた痛みでもって、つかの間の苦痛でもって。
   彼が安らげば、それでいい。
   そう、思っていた。
  「なのに……それなのに、アイズ……」
   見上げられた瞳が。心が、痛かった。
   あの空色の青を、あの銀色を、その名を唇に乗せて。大気を震わせて。
   こんなにも痛いのに。
   彼の世界は終わらない。まだ、終われない世界。
   トリガーを引く、穴が穿たれる。トリガーを引く、穴が穿たれる。トリガーを引く、穴が穿たれる……。
   すべてを闇に還して。すべてを終わらせて。
   そして自らもまた還るその時まで。
   終われない世界。
   
   この世界は理不尽なことばかり。
   運命に呪われて、神に踊らされて。
   哀しみに満ちた世界で青い涙さえ流せない、銀色の光の子供。
   ……ああ、かなしいね。
   
   薄く煙を吐いている凶器を手にし、狂気に覆われた心のままに。
   脈打つこめかみに乱暴に押し当てれば、こつりと頭蓋の内に響く音。
   そして静かに瞼を落とし、深淵に身を委ねよう。
   わずかに人差し指を震わせ。
   トリガーを。
  引けば。
  これで終わる。これで終われる。終わりが始まる。始まりが終わる。
 終わりが終われる。終わりがなくなる。終わりになくなれる。終わってなくなる。
  これで還る。これで還れる。還り路が始まる。始まりが還る。
 還り路が還れる。還れなくなる。還りになくなる。還ってなくなる。
  これで逝く。これで逝ける。逝っていいかい?逝きたいんだ。
 逝けるのかな?逝きたいんだ。光のもとへ。闇の中に。君のいる場所へ。君と共に。
  何処へ、なんて言わない。
  何処か、なんて知らない。
 
  ―君は優しすぎるから。だから。
  おやすみなさい、永遠に。
   望んだものは一人ぼっちのデッドエンドではなく。
   寂しがり屋の僕と共に。
 
   血が流れ肉が裂け骨を晒し、屍になっても。
   僕は僕なりに幸せな結末を望んでいたんだ。
   だから、もう還ろうか。
 














学校のお友達、畑中神有さんを脅して強奪してまいりましたー♪
持つべきものは文才を持った友人よね★

スパイラル〜推理の絆からカノアイです。
いや確かに同姓カップリングなんですけどね。
でも彼らの絆って言うのはなんかこぉ、性的な物を感じさせないという感じがします。
神聖さを醸し出しているのかなー。
彼女の文章がその神聖さに綺麗にあっててうふふふふ♪
ありがとうですー♪
レイアウトの都合上改行をいくつか加えさせていただきました。







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